あの日の帰り道
「了解。んじゃ後で」
電話を終えた山本弟くんがスマホを仕舞いながら金田に宣言した。
「お前、次の駅で降りろ。嫌なら俺等が強制的に降ろすからな」
それまで悔しそうに私を見ていた金田が声を荒らげた。
「五月蠅いっ!お前には関係ないだろっ!」
「俺よりもお前の方が部外者なんだよ。
電車通学じゃないお前がこの電車に乗って咲季ちゃんに会おうとする時点で不審なんだよ。
次に警察行ったら今度こそ退学だろ?
卒業まで後少しくらい大人しく出来ねぇのかよ」
「将也、そいつ逃げないように捕まえてよ!ってか、そいつの顔が伊藤さんに見えないようにしてよっ!」
目の前の彼女が金田を睨みながらそう吐き捨てた。
「それもそうだな」
彼女の声に納得した山本弟くんが友達と一緒に金田を捕まえようとした。
「ふざけるなっ!咲季っ!咲季っ!」
暴れながら拒絶する金田に名前を呼ばれると再び恐怖に身体が強張る。