あの日の帰り道

もう離せない




「咲季っ!」



次の駅で聞き慣れた声がして反射的に立ち上がった。



離れたドアから入ってきた相沢くんが立ち上がった私を見つけて近寄ってきた。



そのまま、相沢くんに手を引かれて抱きしめられた。


「間に合って良かった……」


ぎゅっと力を込めて抱きしめられ、引っ込んでいた涙がまた溢れそうになった。


声を出すとこぼれ落ちそうになるので
無言で相沢くんにしがみつく。


すると相沢くんの手が私の頭を撫でてくれた。



「………急に悪かったな。でもおかげで助かった」

「晃司が奢ってくれるってさ。
駅に着いたら飯に行こうぜ」



相沢くんと上杉くんの声が聞こえた。



「6人ならファミレスがいいよね?
怒鳴ったらお腹空いた〜」


「俺もステーキ食いたい」



元カノさんと山本弟くんの声を聞いてから
自分の状況にやっと気付いた。


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