あの日の帰り道



13時半を過ぎて駅前のファミレスに着くと各々好きな料理を注文した。



彼女がいる手前、どうしたらいいのか分からずに促されるまま相沢くんと上杉くんの間に挟まれて座ってしまったが……。



目の前に座る彼女に申し訳なくてずっと俯いて無言でいた。





「まさか、二人が顔見知りだったとはね」



皆の料理が運ばれてきて食べ始めると、上杉くんのからかうような声にビクッと反応した。



「伊藤さんが見ず知らずの私を助けてくれたの。ごめんね伊藤さん、あの日バイト間に合った?」



彼女に直接問いかけられて慌てて口を開いた。



「だ、大丈夫、間に合ったから気にしないでね。私こそ……巻き込んでごめんなさい」



きっとあの時、山本弟くんだけじゃあんなに落ち着けなかったと思う。



彼女がいてあんな啖呵を切ってくれたから、自分が言えなかった事を彼女が言ってくれて嬉しかったから落ち着けた。


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