あの日の帰り道
「夕方にね、バイトの美紅ちゃんと大島ちゃんが話してたんだけど……。
相沢くんと大島ちゃんは付き合ってるんでしょ?って美紅ちゃんが何度も聞いてたのよ」
それを聞いて出勤時の相沢くんと大島さんを思いだした。
田中さんには私と相沢くんの事は何も言ってない。
けれど、普段からこのメンバーが揃う事が多いからか、洗浄のおじさんと田中さん、店長には多分バレているだろうと思っていた。
「美紅ちゃんがね、裏手で相沢くんと抱き合ってる大島ちゃんを見たらしいの」
「………そうですか」
以前、私に相沢くんが好きと宣戦布告するような大島さんだ。
何かやるだろうとは思ったが、美紅ちゃんが見てる事を想定して抱きついたのかとすぐ勘ぐった。
「多分大島ちゃんが抱きついただけだと思うけど、美紅ちゃんはちょっと口が軽いから……」
「そうですね。ありがとうございます。私なら大丈夫ですから」
一言そう言って厨房に戻った。
相沢くんが微妙に不機嫌な理由がわかって逆にほっとした。