あの日の帰り道


帰り際。

着替えて外に出るといつものように相沢くんが待っていてくれた。



「お疲れ様」



私に気付いた相沢くんは暗闇でスマホから洩れる明かりの中、微笑みながら声をかけてくれる。



夕方の大島さんとの事は話してくれないのかな?

話す程の事でもないと思ってるのかな?

私がその話をしたら焦るのかな?



相沢くんに近付きながらそんな事を考えていたからか、相沢くんが少し私を心配そうに見つめていた。



だから。

相沢くんの側に行くと無意識に抱きついていた。



「………咲季?どうした?」



別に何かあったわけじゃない。



大島さんが勝手に相沢くんに抱きついたんだ、って事はわかっているのに……。



………これも嫉妬?

それとも、大島さんに自分が相沢くんの彼女だと言えない歯痒さ?



自分でも解らない感情が動いていた。


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