あの日の帰り道


「………美紅ちゃんが……
大島さんと相沢くんが抱き合ってた、って言ってたの」



相沢くんに抱きしめられながらぽつりと呟いた。



すると、急に相沢くんの温もりが遠ざかった。



「………」



びっくりした相沢くんが私の肩を掴んで引き剥がして私を見つめた。



不安げな視線と突然消えた相沢くんの温もりが私を物悲しくさせた。



「抱き合ってなんか無い!大島が立ちくらみしたってよろめいたから肩を掴んだだけだよ。
………咲季、誤解させたならごめん」



悲しそうな目で謝ってくれる相沢くんを見て胸が苦しくなった。



「大丈夫。わかってるから。
相沢くんはそんな事しないって信じてるけど……ちょっと気になっただけだから」



やっぱり言わなきゃよかった。

相沢くんが謝るなんて見たくなかった。

相沢くんに不快な思いさせてしまった。



それが悲しくて相沢くんを見つめていただけなのに。



目元に相沢くんの指が触れて気付いた。


自然とこぼれていた涙。

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