あの日の帰り道


なんとか無事に仕事を終えて着替えて外に出ればいつものように相沢くんが待っていた。



「お疲れ様」



いつもの笑顔で私を迎えてくれる。



「っ………」



いつものように、" お疲れ様 "と言い返そうとしたのに言葉が出て来なかった。



相沢くんの笑顔のせいで今まで忘れていた事を思い出したからだ。



一一一相沢くんと一緒にいられるのは後何日?一一一



「………咲季?」



裏口のドア前で固まる私を不審に思ったのか相沢くんが私の目の前まで来てくれた。



「どうした?」



相沢くんが私の頬に手を伸ばす。

今の私達にとっては何気ない嬉しいはずの行為。

なのに指先がほんの少し触れただけでビクッと身体が反応して後退った。



私の反応に驚いて動きを止めた相沢くんの手と表情。



笑顔が消えた相沢くんの顔はすぐに不安げなものにと変わった。


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