あの日の帰り道


「ダメじゃないけど足寒くない?」

「寒くないよ。でも一応バッグの中に黒のスパッツとか用意しといたけど……。
やっぱりジーンズのが良かったかな?」



勝手にバイト後はデートだと意識した自分が恥ずかしくなってしまい、履き替えたほうがいいのかなと焦りだすが相沢くんに引き止められた。



というか、相沢くんに抱きしめられた。



「………こんな可愛い格好、ダメな訳ない」



家の目の前で、しかも朝から抱きしめられて鼓動が早鐘を打つ。



「あ、の……」

「……俺は試されてるのかな?」



履き替えようかと言いたかったのに、抱きしめられて頬に相沢くんの冷えた手が添えられると身体がビクッと反応する。



試す?



その言葉の意味が分からないまま、落ちてきた甘い唇が重なると何も考えられなくなった。


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