あの日の帰り道


「伊藤さん、先に上がっていいよ」



少し離れたコンロ前にいる相沢くんに声をかけられて無意識に時計を見上げる。



「晃司もそれが終わったら上がれよ」



相沢くんの声を聞いた店長が、相沢くんの側に行って声を掛けた。



私はちょうどキリが良いところだったので遠慮なく店長に声をかける。



「店長、私上がりますね。お先に失礼します」


そう言うとあちこちから「お疲れ様」「咲季ちゃんお疲れ様ーメリクリ♪」と労いの声が聞こえてきた。



その声に後押しされてそそくさと厨房から姿を消した。



ピッと名札を通路の機械にかざして本日の勤務は終了。



すぐに更衣室に入り着替えだした。




この後は初めての彼とのクリスマス。



普段から化粧などほとんどしない私だがせめてリップだけは…と鏡の前に立って自分の姿を映し出す。



そこには少し強張った顔の自分がいた。


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