あの日の帰り道
「…………他の女子にこんな事言ったことないけど」
「そうなの?だって相沢くん彼女いるんでしょ?彼女に言った事ないの?」
「……彼女?」
「うん」
あれは学校のテスト期間中だった時だ。
帰りの電車で言うと、私が普段乗り降りしてる車両は前から2つ目の車両だ。
相沢くんも同じ電車通学だから、相沢くんの学校の最寄り駅は知ってる。
その駅には相沢くんの学校の他にも男子校や共学が何校もあって、たくさんの学生が乗り降りしてるから自然と目に着く駅。
テストで早目に帰った時、その駅に電車が滑り込んだ際、偶然ホームに相沢くんが立っていたのが見えた。
可愛いらしい女の子と腕を組んで親しげに話してた姿を見かけた。
次の日も同じ女の子と腕を組んでホームに立っていた。
だから普通に彼女がいたんだな、と思った。
「………彼女って、伊藤さんって事?」
あれ?
スルーされた?
「いや、だからそれはあの一瞬だけの話でしょ。
そうじゃなくて、相沢くんと同じ学校の制服着た可愛いらしい女の子だよ」
それを知ってたからさっきの大島さんを牽制したんだけどな。