あの日の帰り道




「結構お湯が熱いな」



そう言いながら脱衣所を出てきた相沢くんの浴衣姿を見てドキッとしつつ、持っていたドライヤーを相沢くんに向ける。



「出て来るの早くない?ちゃんと温まったの?」



ドライヤーを向けられた相沢くんはそのまま片手で無造作に髪をぐしゃぐしゃにして水気を飛ばす。


その何気ない動作も格好いいから困る…。



「あ…相沢くんもちゃんと乾かしてよ」



ドライヤーを持ったまま言うと、笑いながら私の手からドライヤーを取り上げて自分で乾かしはじめた。



私も軽くブラシで髪を梳くと、狭い洗面台前にいるのも何かと邪魔だと思ってリビングに戻ろうとした。



すると、すぐに相沢くんに手首を掴まれた。



私が振り向くとスイッチを切ったドライヤーを洗面台に置いて、そのまま軽く屈んでキスをされた。



目を瞑る間もなくされたキスが恥ずかしくなって顔が赤くなるのが分かった。


そんな私の顔を見た相沢くんが満足げに微笑んだ。


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