あの日の帰り道



「………なんか、今の相沢くん、可愛い」



そう呟くとやっと顔を上げてくれた。



と思ったら身体が浮いた気がした。



不安定な体制になったからつい相沢くんの浴衣にしがみつく。



「相沢くん?」



可愛いなんて言ったから怒ってるの?



少し見上げた相沢くんの顔が怖く感じた。



「………可愛いって言ったから怒ってるの?」

「………怒ってないよ」



そう返事する相沢くんの表情は険しいままだ。



「……怒ってるじゃん」



なんとなく悲しくなって声が小さくなる。



「咲季に怒ってるんじゃないよ。自分に怒ってるんだよ」

「…………なんで?」

「………咲季の事、何も分かってないから」



………私の事?



そんな事ない。

相沢くんはいつも私の事を考えてくれてるのに。



そう思って口にしようとしたら身体に冷たい感触があった。



そこでやっと自分が相沢くんに抱かれて運ばれてた事に気付いた。


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