あの日の帰り道



相沢くんの言葉で考え込んでしまったから今の状況を忘れてた。




突然動いた相沢くんの背中。


でも、相沢くんの浴衣を掴んでいた手は反射的に強く握り締めて離れないでと訴える。



「……俺は咲季の事を知りたかったんだ。
でも、色々知っていったら俺には何も出来ないって気付いた」



さっきとは違って弱々しい声。



「分かってたから見てるだけにしようって決めたのに……」



………見てるだけに?



「………誕生日に咲季と会って欲が出たんだ」



……誕生日?



「今でなくても…いつか、咲季が俺を意識してくれたらって………。
なのに、金田を見て気付いた。俺は金田と同じだ。
そう分かってても結局諦められなかった」



……………諦める?相沢くんが?

……私を?

そんな風に思ってくれてたの?


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