あの日の帰り道


「咲季、大学受験しなよ」


相沢くんの言葉にピクリと身体が反応する。


「………それは……」


私が受験しない理由。

それをどこまで知ってるのか分からなくて返事が出来なかった。



「大学の費用は咲季の義理のお母さんが用意してるってさ」


「……え?」



いきなり義母の事を言われて、思わず相沢くんの顔を見上げた。



「そう聞いただけで咲季の義理のお母さんとは面識が無いんだけどね」


私の視線に気付いた相沢くんが苦笑いしながら私と視線を合わせる。


「光さん達は咲季の生活費と授業料を出してくれるらしいよ」


「…………」


続いて出た義兄の名前に再び驚いた。

でも、そこで相沢くんの表情が曇る。



「この事を、本当はもっと早く咲季に言いたかった……」


まだ何も理解出来ない私は、悲しげな相沢くんに何と答えていいのか分からなかった。

でも相沢くんにそんな顔をしてほしくなかったから、自然と相沢くんの頬に手を添えた。


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