あの日の帰り道
「ありがとう。でも相沢くんが謝らなくてもいいよ。上杉くんだって嫌がらせするつもりないだろうし」
教科書を受け取りながら逆に反省した。
相沢くんが謝るとは思わなかったから。
「うん、ごめんね咲季ちゃん。
咲季ちゃん可愛いから仲良くしたいなぁと思って話をしたかっただけだから」
上杉くんもすぐ謝ってくれたけど……。
謝ってる、のかな?と思うほど、満面の笑みで私を見る。
「………上杉くんに可愛いと言われても嫌味にしか聞こえないや」
軽い嫌がらせの反撃とばかりに呟いた。
「えぇっ!?本心だよっ!ごめん咲季ちゃん怒らないで」
「怒ってないよ。上杉くんみたいな女の子にモテそうな人に言われてもお世辞にしか聞こえないよ、って本心を言ったの」
「それなら、マジで可愛い咲季ちゃんにモテそうって言われても俺もお世辞にしか聞こえないや」
また笑顔でそんなことを言う上杉くん。
………彼には何を言っても勝てそうにないや。
あっさりと敗北を認めて、これからは上杉くんに揚げ足を取るのはやめようと決めた。