あの日の帰り道
恥も外聞もかなぐり捨てて相沢くんのウエストに腕を回して背中にピッタリとくっつく。
……最初に、歩道から車道に出る時にほんのちょっとの段差で危うく体制を崩しそうになった。
次に信号で左折した時に左に傾いたバイクから落ちそうな感じがして、結局相沢くんにしがみつく形になった。
自分の体幹の無さに泣きたくなる。
「ちゃんとくっついていた方が運転する側も安心だから恥ずかしいことじゃないよ」
信号待ちで横に並んだ上杉くんに笑顔で言われた。
今まで男の人に抱きついたことなんて無いから余計に恥ずかしいのにっ。
赤い顔を見られたくなくて上杉くんからそっぽを向く。
それでも慣れてくると周りの景色を見る余裕が出てきた。
住宅地から段々と緑が増えてきて道も心なしか蛇行するようになってきた。
梅雨も明けた7月終わりの天気は真夏日とは言い難いがそれなりに暑いけどバイクで走ってる時は暑さを感じなかった。