あの日の帰り道
大人しく黙々と歩いていたらそれほど時間がかからないうちに上に辿り着いた。
歩いていた道は石畳だったけど周りは明らかに山だと思える森林の深さ。
その山の途中には立派な御社が建っていた。
朝の眩しい陽射しが周囲の木々で遮られるがそれでも漏れた陽射しが御社を更に威厳あるものに見せていた。
「この社の裏手にまわると街が一望出来るんだよ。
向こうは更に山道が続いてるけど軽装だと無理っぽい」
先に着いた上杉くんが御社を見て呆然とする私に声をかけてきた。
上に辿り着いたからか、気付いた時には相沢くんと手を離していた。
それでもさっきまで握られてた感触が残る右手を無意識に握りしめる。
上杉くんが前にも相沢くんと来た時の話をしながら手水舎で手を清め、御賽銭を投げ入れ、神様に挨拶をする。
そのまま話ながら境内を二人と歩きまわる。
それが楽しいと思ってるのに冷静でいる自分もいて、どちらに感情を任せていいのか悩む自分を奇妙に感じた。