あの日の帰り道



相沢くんが別棟の説明が書かれた立て看板に目を通していた時、少し離れて上杉くんが写メっていたので上杉くんの方に近付いた。



私に気付いた上杉くんは少し微妙な顔をこちらに向ける。



「こういう所は咲季ちゃんには退屈だったかなぁ?」



その言葉が、口数の減った私に気を使ってくれてるのが身に沁みてわかった。



「ううん。御社も凄く立派で緑も多くて…
見てるだけで癒やされるし勉強になるよ」



本当に心からそう思う。



ただ、私がこの場所に居てもいいのか、それだけが気がかりだった。



「………でも私なんかより、相沢くんは彼女さんと来たかったんじゃないかな?
私の気分転換に付き合わせたなら悪い事したなって思って……」


「えっ?晃司に彼女?」



驚いた上杉くんを見てなぜか焦る。



もしかして相沢くんは上杉くんに内緒にしてたの!?



慌てた私はすぐに言い直した。



「ごめん、相沢くんは彼女じゃないって言ってたんだった。気にしないで」


「………それは…咲季ちゃんが、晃司と彼女っぽい子が一緒にいたのを見たってこと?」



勘の良い上杉くんには誤魔化せないようだ。



「………うん。電車に乗ってるときに。
上杉くん達の学校の駅のホームに入った時、何度か同じ女の子と腕を組んで話してる相沢くんを見かけたから彼女さんだと思ったんだ。
でも相沢くんは彼女じゃないって言ったからまだ告白してないだけなのかと思って。
………変な事言ってごめんね」


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