あの日の帰り道
中途半端に暴露しなきゃよかったな、と反省しつつ諦めて対峙する。
「私は山本くんと同い年。あれだけ学校で目立てば名前くらい覚えるよ。山本くんが苦手だから逃げたの」
「同じ年?でも俺を覚えていたくらいには好きだった?」
ヘラヘラ笑いながら腕を伸ばして私の自転車のハンドルを掴んできた。
ムッとした私は即座に急ブレーキをかけて停まった。
そのせいでバランスを崩しかけた山本くんは手を離した。
「悪いけど山本くんに興味ない。付き合う気ないからさっさと帰って」
「え〜?俺はめっちゃ興味わいたんだけど〜?」
中学校の3年間、ずっと同じクラスだった山本くん。
今から2年半前は確かに同じクラスだったけど3年間ほとんど話をしたことが無かった相手だ。
だから私のことなんて忘れても仕方ないけど、まさかナンパされるとは思わなかったからさっさと追い払いたかった。
「ねぇなんで俺の事知ってるの?俺も君の事知りたいな〜」
「私の事なんて教えるつもりない。さっさと帰ってよ」
「そんな事言われると余計に気になるって。こんな気の強い可愛い子、俺が忘れるわけないんだけどなぁ〜?」
「お世話が気持ち悪いっ」
ニヤニヤしながら可愛いと言われたことが本当に気持ち悪くて鳥肌が立った。
このヤンキーだかチャラ男だかわからない種族の輩に捕まるなんて今日は最悪の日だ。
ずっと軽蔑視しながら睨み続けて本気で拒否ってるのに何とも思わないなんて。
「ねぇ、どこかでゆっくりお茶しよう」
ニヤリと笑われた拍子に寒気がした。