あの日の帰り道

「咲季ちゃんごめん、からかうつもりなかったんだ」



すぐ横で上杉くんが私の頭を撫でながら謝ってる。



私が変なとこで上杉くんの名前を出したから。

上杉くんは悪くないのに。



「ごめん、上杉くん。違うの。
ちょっと、他の事、色々考えて、頭の中がごちゃごちゃで、優先順位とか、なんか訳わからなくなって」



「………咲季ちゃん」



涙が少し収まって、上杉くんに必死に訴えてたからか、スルリと相沢くんの腕の中から抜けられた。



「………多分、もう大丈夫。
二人とも、急に泣きだしてごめんね」



泣いたあとで酷い顔なのは承知の上で、
照れ隠しに無理やり笑顔を見せる。



「裏手の方、見に行ってみよう」



目を擦りながら今は今やるべき事だけを考えた。



今は………
相沢くんが楽しんでくれたら、それだけでいいから。