あの日の帰り道
そんな夏休みの登校日の帰りの電車内。
いつものように、とある駅のホームに着くと学生がなだれ込んで来る。
相沢くん達の制服。
登校日が同じだったんだな………。
私のいつも乗る車両に、この駅を利用する生徒達はほとんど来ない。
だから気を抜いていた。
いつものように学生らが乗り込むと走り出す電車。
いつもと違ったのは、珍しく電車内を移動してきた学生がいた事だ。
「お前ん家ってどうせ田舎だろっ?」
「うるせぇな、だったら来んなよっ。この家出野郎がっ」
柄が悪そうな男二人。
わざわざこんな先頭車両の方まで来るなんて余程暇なんだろうな。
そんな輩と絡みたくない私はスマホに視線を落としたままやり過ごそうとした。
「俺、近くにコンビニ無いと死ぬから」
「だったら他所に行けよ。金田のくせに贅沢言うな。嫌なら他に泊めてくれる奴探せっ」
大きい声が嫌でも耳に入る。
先を歩いている男は付いてくる男をうっとおしく思っているようだ。
家出人に捕まって災難だなぁ……。
他人事のように聞こえた声に嫌な記憶が蘇る。
………金田、って言った??
二人は騒ぎながら隣の先頭車両に消えて行った。
その後ろ姿が胸を抉る。
やっぱり……金田っ!