あの日の帰り道



「咲季」



ふいに相沢くんの手が視界を遮り、頬に触れて私の顔を自分に向ける。


目の前には心配そうな表情の相沢くん。


それでも私を安心させようとしたのか、すぐに優しい笑顔を見せてくれた。


そのまま頬の手が目元を拭ったから自分が泣いてることに気付いた。




「どんだけ咲季ちゃんに執着してんだよっ」


俄然優位な上杉くんだが、腕を捻られても尚 私を求める金田の行動に嫌悪感を露わにする。



「あ、相沢〜、来てやったぞ」



男の人の声がした。


どうやら後方車両から移動してきたみたいだけど、相沢くんに後頭部を抑えられてシャツに顔を埋めているから何も見えなかった。




「お前んとこの奴に絡まれてんだよ」


相沢くんの声だ。


さっきのスマホは彼を呼んでたのかな?



「あれ?金田じゃね?」

「ホントだ、なんで金田がいんの?」

「また女漁りじゃね?」

「電車内で?それただの痴漢じゃね?ヤバイだろ」



………いったい何人来たんだろう?


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