あの日の帰り道
だから手を伸ばして上杉くんに抱きついた。
「咲季ちゃん!?!?」
抱きとめた上杉くんがビックリしたような声をあげた。
冗談で言ったのかもしれないけど、
泣き顔は見られたくないからずっと俯いたまま軽く抱きついた。
相沢くんより少し身体の線が細い上杉くん。
まさか彼が金田を追いやってくれるなんて思わなかったから嬉しかった。
「咲季ちゃん………もう大丈夫だからね」
抱きとめた上杉くんがまた頭を撫でる。
二人が居てくれて良かった。
もし、二人が居なくて私が金田に見つかっていたらと考えると、また身震いしてしまう。
「………相沢の彼女、だよな?」
どこからか聞こえた声。
「今は俺の彼女なの!」
上杉くんが突然ギュッと抱きしめて宣言した。
「は?
えっ……って謙次、晃司がヤバい……」
「今までさんざん美味しい役譲ってやってんだから少しくらい良いだろ?
ってか、咲季ちゃんから抱きついてきたんだから文句言わせねぇけど」
「………抱きつかれたからって、何しても良いわけじゃないだろ」
あ、相沢くんの声だ。
相沢くんの声が聞こえるなら安心できる。