あの日の帰り道
まだ知らぬ彼女の過去
「えっと……相沢の彼女?はなんで金田に目つけられてんだ?」
聞こえた声は多分山本くんの弟くん?
「金田って去年警察沙汰になったよな?」
「あ〜、ストーカーして捕まったやつ?」
「相手って、なんか知らん学校の子じゃなかったか?」
「でも、それで退学なったんだよな?なんでまた制服来てたんだ?」
「まさかまた1年からやり直してるとか言わねぇよな?」
周りで何人かが話してる時にガタッと揺れて電車が停まる。
「あ、金田が連行されてる」
「咲季ちゃん、あいつはこの駅で下ろしたからもう大丈夫だよ」
他の人の声が聞こえる中、上杉くんが私に話しかけてくれるけど、金田の姿を見たくない私は微動だにしなかった。
「………あいつにストーカーされたの?」
声を潜めてこっそりと上杉くんに問われた。
隠しているのは得策ではないし、上杉くんは助けてくれたのだから多少は知る権利があるだろう。
上杉くんに抱きしめられたまま頷いた。
「………だからあいつは咲季ちゃんに執着してんのか」
電車が再び動き出すと
肩を掴まれ後ろに引っ張られた。
「もう少し余裕見せろよ」
からかう声の上杉くんから引き剥がされた私は再び相沢くんに肩を抱かれた。
「咲季、他の車両に移動しよう」
こそっと囁かれた言葉に頷いて、相沢くんに促されるまま歩き出した。
今日は二人がいて良かった。
けど夏休みが終わってまた学校が始まるようになった時、金田にまた待ち伏せされたらどうしようかと不安が過る。