あの日の帰り道


行きの電車ではすぐに睡魔に襲われた上杉くんが私の隣で寝ていたので気楽だった。


登校後、教室を出る前に上杉くんに連絡し駅前で合流して一緒に帰りの電車に乗る。





「咲季ちゃん、俺が奢るから昼飯一緒に食べよう」



電車の座席に落ち着いた直後に誘われた。



「………奢らなきゃいけないのは私の方だと思うけど?」



本当はあまり上杉くんと二人きりになりたくないから直帰したかった。



上杉くんは勘が良過ぎる。

私と相沢くんの事でまたいつ何を言われるかわからないから。



でもこの状況で奢ると言われ、お昼に誘われたら嫌と言えない。

本来なら私が奢る立場だから。



軽いため息を一つ吐いて上杉くんと対峙する覚悟を決めた。



「私はなんでもいいからお店は上杉くんが決めてくれる?」


「喜んで」


屈託のない笑みで一言返事をするとすぐにスマホでお店を調べると言った上杉くん。



………まさか、高そうなお店とか行かないよね?



思わず一抹の不安が過った。


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