あの日の帰り道



走行中抱きついていた温もりと相沢くんの匂いが残るシャツを着ていたから錯覚を起こしたんだと思う。



「咲季、着いたよ」



バイクを止めて私に声をかけた。



だから私が先にバイクを降りなきゃいけないのだが……。



相沢くんの背中にしがみついたまま微動だにしなかった。



「………咲季?」



……もう少しこのままでいたい。

ほんの少しでもいいからこのまま相沢くんにしがみついていたかった。



「………咲季、このままだと俺が咲季を抱きしめられないんだけど」



腰を捻って後ろを向いた相沢くんの手が私の被るヘルメットを軽くポンポンと叩く。



………相沢くんが私を?
抱きしめてくれるの?



それならばと相沢くんを拘束してた腕を解いて大人しくバイクから降りた。



降りてから辺りをキョロキョロと見回す。



どこかの駐車場みたいだけどさほど広くなく、周りが木で囲まれてて全然場所が確認出来ない。



相沢くんがバイクを押して動かし駐車場に停めてエンジンを切ると、バイクのライトが消えて真っ暗になった。


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