あの日の帰り道


慌てて相沢くんがいた方を見るけど相沢くんの姿すら確認出来ない暗さで思わず身構えた。



けど、次の瞬間にヘルメットを軽くポンと叩かれて顔をあげる。



ヘルメットを叩いた手が顎下に移動してヘルメットの留め具を外した。
そのままヘルメットを取ったかと思ったら、ヘルメットを持ったままの手が私を抱きしめた。



「大丈夫?暗いから怖かった?」



頭上から聞こえた優しい声。

抱きしめられた安堵感。

頭を撫でる手の感触。



その嬉しさに、自然と腕が動いて相沢くんにしがみついて頭を左右に軽く振る。



「そっか」



一言だけポツリと呟いた相沢くんの腕に少し力が入って更に私をキツく抱きしめた。







「…………」



そのまま、どれくらいそうしていたか。



夏の夜の蒸し暑さに、相沢くんのTシャツに頬寄せていた顔が少し汗ばむ。



涼を求めて顔を少し相沢くんから離すと頬に手が触れた。



まるで泣いていないかと確認するような指の動き。


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