あの日の帰り道
………私が泣いてるかと思ったの?
辺りの暗闇に慣れた目が、目の前の相沢くんの顔を認識した。
少し心配そうな表情。
でも私と視線が合うとすぐに優しく微笑んで私の手を取った。
「こっちだよ」
暗闇の中、相沢くんに手を引かれて木々の生い茂る道沿いを少し歩くと急に開けた場所へと辿り着いた。
山の中腹の小さな展望台。
そんな印象のちょっと休憩出来るスペース。
木目調の手摺りでぐるりと囲まれ、車なら5、6台しか停まれないようなスペースに簡素な木で出来た縁台のようなベンチが3つ置かれてるだけの場所。
ほの暗い電灯が道沿いに1つあるだけなのであまり明るくは無いが、その薄暗闇のおかげで手摺りの向こうの街の灯りが鮮明に見えた。
「……すごい」
バイクでは多分30分くらいしか走ってないと思うけど地元近くにこんな場所があるなんて知らなかった。
「近くにこんな場所があったんだね」
夜景に魅入られながら呟いてから、隣で同じように夜景を見つめる相沢くんをチラリと仰ぎ見た。