The Math Book

 あと、たった一つ覚えていることがあるとすれば、隣の教室にいた自分と同い年か年上くらいの少女ががたいの少し良い男の先生にチョコレートをあげていたことくらいである。

「先生、これ友達にもらって余っちゃったからあげるよ〜」

「え、まじで言ってる? いいの?」

「うん、全然。ほら余っちゃってるし」

「まじか、ありがとうございます」

 Z先生の顔色を伺ってみた。

 特に変わった様子はない。

 平静を保っている。

 というか、もしかしたら彼らのやりとりに気がついていないのかもしれない。
 
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