The Math Book

  あれから20分ほど経った頃だろうか。息を切らしたZ先生が慌てて教室に入ってきた。

 やっときた!

 と思いながらも、なんでもないふりをして問題を解き続けた。

 疲れ切った顔をしたZ先生がヘナヘナと椅子に座り込む。

「まじでごめん。電車が遅れちゃって」

「あ、全然大丈夫ですよ」
  
 私はそっけなく答えた。

「何その課題。自分でやってたの?」

「いや、塾長がきて課題を出してくれました」

「ああ、そうなんだ。よかった」
 
 安堵の表情をするZ先生。

「とにかく先生に何事もなくて本当によかったです」

「うん、電車が遅れただけだからね。・・・で、どこやったの?確率?終わった?」

「はい、終わりました、先生来るのめっちゃ遅かったので」

「そうだよね、ごめんごめん。」

いや、全然。本当に気にしていないので謝らなくて大丈ですよ」

 私はペコペコ謝るZ先生が可哀想だったので慌てて自分が怒っていないことを伝えた。
 
 
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