The Math Book
そこからいつもの様に授業が始まった。
電車の遅延のせいでZ先生の顔はだいぶ疲れ切っていた。
急がなくてもよかったのに。
一生懸命解説をするZ先生の話を聴きながら心の中ではそう思っていた。
授業も終盤に差し掛かった時、Z先生が驚くことを口にした。
「今日俺のせいで授業ほとんど潰れちゃったから、代わりの授業いつにする?」
私は心底驚いた。
なぜならたった50分くらい遅れただけ、
しかも二時間の授業であと70分くらいあるのに今日の代わりの日をつくると言い出したからだ。
しかもこの日先生が遅れてまでしてくれた授業は先生の収入ではなくなる。
電車の遅延のせいなのにこれではZ先生に申し訳ない。
私は慌てて断ろうと口を開いた。
「い、いいです!だって今日絶対時間なくて大変だったのに塾に来てくれて
70分も授業をしてくれたじゃないですか!だから、いいです!しないで下さい!」
「いや、そう言われてもこっちが申し訳ないから」
私はZ先生を説得するのに必死だった。
「でも先生のお金なくなっちゃうんですよ?時間ももったいないじゃないですか!今日授業を受けることができただけでも充分なんです、だから代わりの授業はなしで大丈夫です!」
「いやいやいやいや」
「いやいやいやいや」
「じゃあ、俺が勝手に授業の日決めるよ」
「やめて下さい、行きたくありません」
「それじゃ俺が困っちゃうよ。じゃあ、明日の5時とかどう?」
「その日は何もないですけど・・・」
「じゃあ明日の5時で」
「っっっっっっってちょっと先生!まじで言ってるんですか?」
「うん、俺はまじだよ」