The Math Book

 Z先生はなかなかめげなかった。私も引き下がらなかった。

 授業が終わる時間になってもなかなか私を帰らせようとする素振りを見せなかった。
 
 私があまりにも渋るので、Z先生は

「ほら、Say! Say!」

 と英語で私のことを急かす様になった。

「No」
 
 私まで英語で否定する様になった。
 
 あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。

 いや、私にとってはZ先生とコミュニケーションを取れるだけでも幸せだったので、あっという間だった気がする。
 
 あまりのZ先生の根気強さに私は折れてしまった。

「・・・じゃあ本当に私明日塾に来ませんよ。来なくても知りませんからね」

「うん、それでもいいよ。まじでずっと待ってるから。・・・じゃ、明日の5時ね。絶対に来てよ。ずっと待ってるから」
 
 さっきまで私が来なくてもいいと言ったはずなのにZ先生は私が明日塾に来るかどうかを気にし始めた。

 でももう言い返す気力など私にはなかった。

 塾の規則であったとはいえ、ここまでZ先生が辛抱強いことに心底驚いていた。

 きっと私が先生だったら生徒の言葉に甘えてしまうだろうに。
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