僕の居場所は
「……そう、かな……?」

普段褒められたことがないから、何だか恥ずかしいし、違和感があって気持ち悪いんだ。

「あ、ありが……と」

思わず俯いて、小さな声で言う。……やっぱ、僕は褒められるべき人間じゃない……。

「……先輩、一緒に帰りましょう」

翠は、時計を見上げながら言った。僕も時計を見る。もう部活の終わる時間だった。

「え……もうこんな時間……」

僕はそう呟きながら、カバンにスケッチブックと筆箱をしまうと、翠と並んで部室を出た。



自分の部屋に飛び込むように入って、床に座り込むと僕は耳を塞ぐ。まだ、あの言葉が頭から離れなくて。

「……っ。バカ、だな……」

あいつが……問題児のあいつが、あんなことを言うのは、いつものことじゃないか。なのに、何でこんなに悲しいんだろう。涙が、溢れては止まらないや。

「……僕は、僕は……いらない存在だった……?」

問題児に「消えろ!」って言われただけなのにな……何で、ここまで……。

立ち上がって制服を脱ぐと、部屋着に着替えた。

「碧!ご飯!」

考え事をしてたら、もうご飯の時間。僕は「はーい!」と返事をすると、何事も無かったかのようにリビングに向かう。

今日も家族の前では、笑顔で過ごすんだ。
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