花魁夢楼〜貴方様どうか私を買っていただけないでしょうか〜
美しい着物を着て優雅に振る舞っているように見えても、ここには花魁たちが求める自由は存在しない。一夜限りの戯れを過ごすたびに、このような生き方しかできないとシミの数が心に突き刺さるのだ。

「橙色に輝く花のように、日の当たる場所で生きたいと願いんした。約束を守りたかった……」

花魁が自由になるには、誰かに買われるしかない。しかし自分を買ってくれる人はいない。買うための値段が安くないからだ。悲しくなり、夕顔は泣きそうになる。そんなことを訊いてくるお客は今まで一人もいなかった。

男性は夕顔を見つめた後、窓をそっと開ける。そこから見えるのはすっかり見慣れた籠の外の景色だ。

「真は行くあてなど無くなってしまいんしたのだけれど、此方の籠の中から見える景色だけはわっちをいつなる時も癒してくれるのでありんす」

泣いてはいけないと夕顔は堪え、男性に微笑む。男性はその目を逸らし、「籠の外はもっといい景色が広がっているぞ」と呟いた。
< 4 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop