花魁夢楼〜貴方様どうか私を買っていただけないでしょうか〜

女将に頭を下げ、夕顔は男性に連れられて吉原の外に出る。何年ぶりに味わう自由な空気は、夕顔の涙をまた誘った。

「おい！花魁夕顔だぞ！！」

「あの武士、花魁夕顔を買ったのか！？」

「あんな高い花魁を！？」

吉原の道を歩く男性たちが夕顔を連れて歩く男性を見て、驚きの声を上げる。夕顔自身も驚いていた。こんなに高い自分を男性はあっさり買った。自分は年季が過ぎるまであの場所から出られないと思っていた夕顔にとって、初めて会った男性がここまでしてくれる理由がわからない。

「何故、私を……」

夕顔が訊ねると、男性は「約束を守ってもらうために来た」と呟く。夕顔の頭の中に懐かしい記憶が思い出されていった。そして、驚いてしまう。

「あなたまさか……流一郎（りゅういちろう）？」

夕顔の声に流一郎はコクリと頷く。何年ぶりに見る変わってしまった顔に夕顔は何度も流一郎を見つめてしまった。

流一郎は夕顔の幼なじみだった。武家の家の人間と貧しい農民の家の人間だったが、幼い子どもだったため仲良く遊べたのだろう。いつも二人は一緒にいた。