会社の後輩に甘やかされています
「姫ちゃんおはよう。」

「あ、祥子さん、おはようございます。」

祥子さんが明るく手を振りながら駆け寄ってきたので、私も祥子さんの方に近付いた。

「姫ちゃんこの電車?いつもと方面違うくない?」

「実は最近引っ越したんです。」

「引っ越し?はっ!まさかついに同棲?」

「へっ?えっと…。」

祥子さんは一人盛り上がりキャーキャー言い出すので私は焦る。

同棲だったらどんなによかったか。
実は親から、“もう三十になるんだから家を出なさい”と半ば強引に実家を追い出されたのだが、さすがにそんな事恥ずかしくてとても言えない。

「これは大ニュースだわ。」

私がもたもたしていたので、祥子さんは肯定と受け取りニヤリと笑った。

「ちょっと祥子さん、違いますって。」

慌てて否定するも、祥子さんはもう聞く耳持たない。

「さっそく真希ちゃんに報告しなくっちゃ。」

「祥子さんってば~!」

今回ばかりはきちんと否定したつもりだったのに、”朱宮姫乃があのエリートイケメン彼氏とついに同棲を始めた”という間違った噂が、社内に瞬く間に知れ渡っていった。
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