会社の後輩に甘やかされています
「はぁ~。」

また嘘が大きくなってしまった。

「同棲なんて憧れちゃいます。」

「姫ちゃんも最近の子よねー。私が若い頃は同棲なんて親が許さなかったわ。」

真希ちゃんと祥子さんが好き勝手なことを言い、キャッキャと盛り上がっている。

「だから、違いますって。」

「照れなくてもいいのにー。」

妄想を暴走させる彼女たちに、私はため息しか出ない。否定しても信じてもらえないので、おしゃべりに付き合う気がなくなった。
私は一人静かに仕事に戻る。

「姫乃さん、テレコン借りたいんですけど。」

「はい、ちょっと待ってね。」

大野くんが備品を借りに来て、私はテレコンをキャビネットから出すために席を立った。
管理台帳に日付や名前を書いていると、大野くんも横に立つ。

「姫乃さん、同棲してるの?」

突然の話題にシャープペンの芯がボキッと折れる。

「えっ?いや?あの。えっ?」

動揺してしどろもどろになっていると、大野くんは目を細めて「ふーん」と気のない返事をした。

「ま、どっちでもいいけど。でもあのマンション、単身者用だよね?」

ギクリ。

思わず肩が跳ねる。
大野くんは何が言いたいのだろう?

「じゃあテレコンお借りします。」

フリーズした私を尻目に、大野くんはテレコンを持って颯爽と去って行った。
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