会社の後輩に甘やかされています
恋に仕事に全力投球
というわけで、晴れて恋人の練習から樹くんの彼女に昇格した訳なのですが。

彼女かぁ。

生まれて初めて彼氏という存在ができたことが嬉しすぎて、気を抜くとすぐに顔がにやけてしまう。

─俺は姫乃さんが好きだから。

何度も頭の中で反芻しては緩む頬。
慌てて両手で頬をつねった。

痛い。
やっぱり夢ではないみたい。
練習とか言ってたことが遠い昔のように感じてしまう。

ということは、もう練習じゃなくて本番ってことになるよね。
本番…?
それはそれでどうしたらいいかわからない。
うんうんと悩んだ末でてきた答えは“とりあえずデートかな?”だった。

いつも通りの夕食時、私は意を決して切り出した。

「樹くんデートしよう!」

「いいですよ。どこか行きたいとこあります?」

「行きたいところ?」

行きたいところは考えていなかった。
我ながら見切り発車だったなと軽く反省する。

デートといえば樹くん何て言ってたっけ?
私は前に樹くんとした会話を必死に思い出す。
あ、そうだそうだデートと言えばここ。

「えっとー、水族館か遊園地!」

ドヤ顔の私に、樹くんはポカンとした顔をした。
あれ?何か間違ったかな?
< 55 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop