会社の後輩に甘やかされています
「大野くんここなんだ?」

「姫乃さんって最寄り駅ここでした?」

「うん、最近引っ越したんだ。」

「ふーん。」

電車を降りて改札口まで一緒に歩く。
そこで別れるものだと思っていたのに、大野くんは私の帰り道と同じ道を歩いていく。

「大野くん家こっちなの?方面一緒だね。全然気付かなかったなぁ。」

といっても、私はまだ二週間前に引っ越してきたばかりだ。近所の事はまだよくわかっていないし、会社への行き帰りの駅からアパートまでの徒歩三分くらいしか行動範囲がない。まさか大野くんも同じ駅を使っていて、帰る方向も同じだとは思わなかった。

「じゃあ俺ここなんで。」

「ええっ!」

私は驚きのあまり叫んで立ち止まった。

「どうしたんですか?もしかして家まで送ってほしかったですか?」

「ちっ、違うよ。」

私の動揺っぷりに、大野くんは不思議そうな顔をする。

「大野くんの家、ここ?」

「はい。」

「…私もなんだけど。」

「はい?」

私の指差す先。
最寄り駅から徒歩三分。
六階建ての築十年のマンション。

まさかの同じマンションだった。
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