ハナヒノユメ
今日は、いつもより長居をしてしまった。

話していると、なかなか区切りが見つからなくて。

たどたどしくて申し訳ないな。

「先輩、また来ますね。」

そう言って去ろうとするけど、またすぐに振り返った。

こっちを見てる?

「保坂先輩?」

「…。」

「あの、分かりますか?」

「…。」

良くみると私だけを注視してるわけじゃないみたいだけど、

人がいるとかってことは分かるのかな。

また近づいて側の椅子に座った。

ゆっくりだけど視線がこちらにうつっていった。

どんなこと考えてるんだろ。

怖がってるってことではなさそうだけど。

なんだかそういうの気にするとずっとここにいても構わないって思えてくる。

あ、手、指をちょっとずつ動かしてる。

またお花を、

それとも、

でも、さすがに手をつなぐのは石井先輩もいるし遠慮したほうがいいかな?

まずはお花を手のひらにのせてあげた。

前と同じようにさわってる。

でも、しばらくするとその反応もなくなってしまう。

というより、手のひらからお花が落ちちゃうから。

...うーん。

もっとかたちのあるものとか?

これはどうかな?

たまたま持っていた手提げかばんについていたくまのぬいぐるみのストラップをおいてあげた。

毛がフサフサしてて触り心地はいい。

...あ、けっこういいかも?

ぎゅって握ったり、緩めたりして遊んでるみたい。

こんなに分かりやすく反応してくれたのは大きな成果だ。

まだ全然離さないし。

「それ、気に入りました?
もしよければ、使ってください。」

あ、これぬいぐるみだってちゃんとわかってるかも。

頭を指でなでたりしてるし、いちど手からおちてもゆっくり探してまた握ったりしてる。

こうやって少し反応してくれるだけでもうれしいな。
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