ハナヒノユメ
「そんなことがあったんですね。」

「うん...。全部私のせいだし、保坂先輩は悪くないんだけど...。」

「安東先輩のせいじゃないですよ。
仕方ないことだと思います。」

「そうかな。」

「はい。いつだって全力で真心を込めて接することなんて難しいんじゃないかなと。
たまには嫌になったり、誰だってします。」

「そう...なのかな。」

「きっと先輩は、嫌なことから逃げるって駄目だって思うかもしれないんですけど。

いつだって逃げられるってどこかで思ってないと、むしろ自分が辛くなっちゃうと思うので...。」

「うん...。」

「すみません。
さっきから偉そうなことを言ってしまって。実は、介護で疲労してた両親を見て...。ちょっとそんなことを思ってしまっていて。

どんなこと言いたいかっていうと、その...。自分を責める必要はないと思うんです。」

「...保坂先輩もいつもそう言うんだけどね...。
私のこと、悪くないって。凄く感謝されて。逃げても、いいって...。」

「そう言ってくださっているなら、後ろめたく思う必要はないと思います。

落ち着くまで距離をとるのも手じゃないでしょうか...。」

「...そうだね。」

「もし、行くのが難しいようなら、僕が様子だけでも見に行きますから。」

「そんな...悪いよ。」

「大丈夫です。是非、僕で良ければ遠慮なく頼ってください。」

「本当にありがとう。」

「いえ。」

こんなにいい人っているんだな...。

まあ、この人もお人好しなのかもしれないな。
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