『ねこねこ幼女』の姉貴分〜ミメット姉さんの奮闘(書籍化記念SS)
エリナがこのスカイヴェン国にやってくる前のこと。
キジトラ猫のミメットは、己の才能のなさに悩んでいた。
「あー、ミメット、今朝のこの料理はなんなのか、聞いてもいいかな?」
「……あのね。あたしが肉を焼くと、なぜだか真っ黒になるでしょ?」
「うん、真っ黒になるよね。で、中は生肉のままなんだよね、なぜだか」
早朝の青弓亭で、スカイヴェン国の王都警備隊員である犬のマイクは、スープ皿の中に入っている赤や緑や茶色が混じったどろっとしたなにかを見つめながら頷いた。
「それで、焼くのがまずいのかなって思ったわけ。野営する時は獲ってきた獲物を捌いて焚き火で焼いて食べるけど、その時はこんなに黒くならないんだ……」
ちなみにそれは、焚き火から程よく離して全体を回しながらこんがりと中まで火を通して焼くからである。遠赤外線で中はジューシー、外はパリッと焼けた肉に、塩胡椒しただけでも美味しいのだ。
「だから、焼くのはやめて煮てみようと思ってさ。いろんな具が入っている方が美味しいと思って、野菜も入れて煮込んでみたんだよ」
「そ、そっか。……なんの野菜を入れたのか、聞いてもいい?」
スープ皿の中にスプーンを入れて、黒と焦げ茶の塊を救い上げた犬のマイクは尋ねた。ちなみに、この青弓亭には狐のサヴァンと熊のアルデルンも来ているのだが、ふたりともミメットの料理の匂いを嗅ぐと、そのまま悲しい目をして黙り込んでいた。
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