何様のつもり?
再会
「暑い〜、今年は本当蒸暑い〜」
こんな独り言を言いながら、駅の改札を抜けて会社へ向かう。
私の会社は、駅からすぐのビルの8階。
この階の全フロアーをうちの会社、SHINEが使用させていただいている。
SHINEは、女性誌を出版している会社で、私は編集の仕事をしている。
この仕事は、高校の時からの夢だった。
元々、ファッションやメイクに興味があり、女性誌もよく見ていた。
将来、こういう雑誌の編集ができたらいいなぁってずっと思っていた。
だから高校卒業後は、編集の仕事ができるようにパソコン関係の専門学校へ行き、いろんな分野のことを学んだ。
その時の先輩で、公私ともに仲の良い中沢らんさんに一緒に仕事をしないかと誘われ、今に至る。らんさんが卒業してすぐに作った会社。今では、そこそこ有名な女性誌に成長した。
「おはよう、秋帆」
「おはようございます、らんさん」
「出勤してきてすぐで悪いんだけど、会議室に来て」
「はい、わかりました」
私は、スケジュール帳とメモ用紙を持ち、会議室へ向かった。
会議室に入ると、らんさんは、資料を見ながら私に言った。
「来月の特集なんだけど……」
「はい」
「モテる男の条件、モテる女の条件にしようと思うの」
「……はい」
「ノリが悪いわね。あっ、秋帆はこの手の特集は苦手だったわね」
「そ、そんなことないです。それにメイン特集はらんさんの担当なので問題ないです」
「それが……今回は秋帆、あなたにメイン特集の記事を書いてもらおうと思って」
「えっ?私がですか?」
「そう、この特集は、対談も予定してるから、段取りから全部、秋帆に任せるわね」
「……はい。わかりました」
「これ資料ね」
らんさんが微笑みかけながら、私に渡した。
「どうしたの?嬉しくないの?メイン特集の記事を書けるなんて最高じゃない。ずっとやりたがっていたでしょ。不安はつきものだけど、秋帆ならできるわ。期待してるわよ」
「はい、そうですよね」
「秋帆は、モテる条件って何だと思う?」
「さぁ、何でしょう?やっぱり外見ですかねぇ……。らんさんはどう思います?」
「私は……。そうね、内面から出るオーラじゃないかしら」
「内面から出るオーラ…」
何か難しいなぁ……。
モテる人って、内面から出るオーラかぁ。
ふと、蓮翔の顔が思い浮かんだ。
蓮翔もモテてたなぁ。
今は、どんな大人に成長したのだろうか?
私のことは覚えてるだろうか?
素敵な人と幸せに暮らしているのだろうか?
蓮翔の隣には.....
そう考えただけで、胸がチクッとした。
私は、まだ蓮翔が好きだ。
自分の気持ちを再確認した。
「秋帆、大丈夫?」
「なっ、なんでもないです」
「資料に目を通しておいてね」
「はい」
私は資料をパラパラめくった。
「男性は、最近IT業界で注目を集めている塚本 蓮翔さんね。女性はモデル業界で人気の花元 かりんさんでいこうと思うの」
そこには2人のプロフィールが記入されていた。
ま、まさかね?あの蓮翔じゃないよね?
きっと同姓同名だよ。
そこまで珍しい名前じゃないし.....。
資料に、写真がなかったので本人かどうか確認ができなかった。
「秋帆?さっきから様子が変だよ」
「そ、そうですか?初めてのメインを任されて、緊張してるのかもしれません」
「ははっ、もっとリラックスして。秋帆らしくやればいいのよ。じゃぁ、宜しくね」
「らんさん?」
「いつもは、特集はらんさんが担当してたじゃないですか?今回はどうしてやらないんですか?」
「やりたいんだけど、今回は無理なの」
「どういうことですか?」
「私ね……結婚することにしたの」
「本当ですか?」
「昨日ね、颯さんからプロポーズされてね。だから、特集を担当できないってわけじゃないんだけどっ。 これ見てもらえる?」
そう言いながら、私に別の資料を見せた。
「これは、らんさんが前からやってみたいと言っていた企画じゃないですかっ」
私は、興奮して声が大きくなってしまった。
「そうなの。一度やってみたかったウェディング特集」
「やっと実現するのですね。おめでとうございます」
「ありがとう。秋帆は、知っていたものね。私がやりたかった企画。私の結婚を機にSHINEの特別版ということで出版したいのよ」
らんさんの幸せな笑顔を見たら、感激して泣きそうになってしまった。
らんさんはこの会社を立ち上げてから、私に何度か話してくれた。
結婚は、人生の通過点でしかないけれど、最高のパートナーと出会えることは、奇跡に近い。だから雑誌を通じて応援してあげたいし、男女問わず、輝ける未来を歩んでほしい。だから今からいろいろな資料を集めて時期が来たら、出版したいと話していたのだ。
「よかったですね」
「もう、秋帆ったら、泣きそうになってるじゃない」
笑顔で話しかけてくれるらんさん。
「だって、嬉しくて.....」
「ありがとう」
本当にらんさんは輝いている。自分のやりたいことを実現している。らんさんもこの地位までくるのに散々苦労した。
今の時代、雑誌を購入する人は少なくなってきている。だから、うちの雑誌SHINEは、電子書籍の購入も可能で、常にその時のニーズに合わせて対応している。SNSもうまく利用しながら、色々な特集を考える。でも、いつも考えているのは、男女問わず、輝ける未来なのだ。
私は、その言葉に感動した。私も輝きたい。だからこの仕事が、大好きなのだ。大変な部分もたくさんあるが、達成感もある。
「そういうことなら、私も頑張ります」
「ありがとう。よろしくね。予定が決まったら、報告してくれる?」
「はい、まずはアポをとって、報告しますね」
「期待してるわ」
私は、さっそく仕事に取り掛かった。
まずは、この特集を成功させること。
それがきっとらんさんへの結婚祝いになると思うから。
こんな独り言を言いながら、駅の改札を抜けて会社へ向かう。
私の会社は、駅からすぐのビルの8階。
この階の全フロアーをうちの会社、SHINEが使用させていただいている。
SHINEは、女性誌を出版している会社で、私は編集の仕事をしている。
この仕事は、高校の時からの夢だった。
元々、ファッションやメイクに興味があり、女性誌もよく見ていた。
将来、こういう雑誌の編集ができたらいいなぁってずっと思っていた。
だから高校卒業後は、編集の仕事ができるようにパソコン関係の専門学校へ行き、いろんな分野のことを学んだ。
その時の先輩で、公私ともに仲の良い中沢らんさんに一緒に仕事をしないかと誘われ、今に至る。らんさんが卒業してすぐに作った会社。今では、そこそこ有名な女性誌に成長した。
「おはよう、秋帆」
「おはようございます、らんさん」
「出勤してきてすぐで悪いんだけど、会議室に来て」
「はい、わかりました」
私は、スケジュール帳とメモ用紙を持ち、会議室へ向かった。
会議室に入ると、らんさんは、資料を見ながら私に言った。
「来月の特集なんだけど……」
「はい」
「モテる男の条件、モテる女の条件にしようと思うの」
「……はい」
「ノリが悪いわね。あっ、秋帆はこの手の特集は苦手だったわね」
「そ、そんなことないです。それにメイン特集はらんさんの担当なので問題ないです」
「それが……今回は秋帆、あなたにメイン特集の記事を書いてもらおうと思って」
「えっ?私がですか?」
「そう、この特集は、対談も予定してるから、段取りから全部、秋帆に任せるわね」
「……はい。わかりました」
「これ資料ね」
らんさんが微笑みかけながら、私に渡した。
「どうしたの?嬉しくないの?メイン特集の記事を書けるなんて最高じゃない。ずっとやりたがっていたでしょ。不安はつきものだけど、秋帆ならできるわ。期待してるわよ」
「はい、そうですよね」
「秋帆は、モテる条件って何だと思う?」
「さぁ、何でしょう?やっぱり外見ですかねぇ……。らんさんはどう思います?」
「私は……。そうね、内面から出るオーラじゃないかしら」
「内面から出るオーラ…」
何か難しいなぁ……。
モテる人って、内面から出るオーラかぁ。
ふと、蓮翔の顔が思い浮かんだ。
蓮翔もモテてたなぁ。
今は、どんな大人に成長したのだろうか?
私のことは覚えてるだろうか?
素敵な人と幸せに暮らしているのだろうか?
蓮翔の隣には.....
そう考えただけで、胸がチクッとした。
私は、まだ蓮翔が好きだ。
自分の気持ちを再確認した。
「秋帆、大丈夫?」
「なっ、なんでもないです」
「資料に目を通しておいてね」
「はい」
私は資料をパラパラめくった。
「男性は、最近IT業界で注目を集めている塚本 蓮翔さんね。女性はモデル業界で人気の花元 かりんさんでいこうと思うの」
そこには2人のプロフィールが記入されていた。
ま、まさかね?あの蓮翔じゃないよね?
きっと同姓同名だよ。
そこまで珍しい名前じゃないし.....。
資料に、写真がなかったので本人かどうか確認ができなかった。
「秋帆?さっきから様子が変だよ」
「そ、そうですか?初めてのメインを任されて、緊張してるのかもしれません」
「ははっ、もっとリラックスして。秋帆らしくやればいいのよ。じゃぁ、宜しくね」
「らんさん?」
「いつもは、特集はらんさんが担当してたじゃないですか?今回はどうしてやらないんですか?」
「やりたいんだけど、今回は無理なの」
「どういうことですか?」
「私ね……結婚することにしたの」
「本当ですか?」
「昨日ね、颯さんからプロポーズされてね。だから、特集を担当できないってわけじゃないんだけどっ。 これ見てもらえる?」
そう言いながら、私に別の資料を見せた。
「これは、らんさんが前からやってみたいと言っていた企画じゃないですかっ」
私は、興奮して声が大きくなってしまった。
「そうなの。一度やってみたかったウェディング特集」
「やっと実現するのですね。おめでとうございます」
「ありがとう。秋帆は、知っていたものね。私がやりたかった企画。私の結婚を機にSHINEの特別版ということで出版したいのよ」
らんさんの幸せな笑顔を見たら、感激して泣きそうになってしまった。
らんさんはこの会社を立ち上げてから、私に何度か話してくれた。
結婚は、人生の通過点でしかないけれど、最高のパートナーと出会えることは、奇跡に近い。だから雑誌を通じて応援してあげたいし、男女問わず、輝ける未来を歩んでほしい。だから今からいろいろな資料を集めて時期が来たら、出版したいと話していたのだ。
「よかったですね」
「もう、秋帆ったら、泣きそうになってるじゃない」
笑顔で話しかけてくれるらんさん。
「だって、嬉しくて.....」
「ありがとう」
本当にらんさんは輝いている。自分のやりたいことを実現している。らんさんもこの地位までくるのに散々苦労した。
今の時代、雑誌を購入する人は少なくなってきている。だから、うちの雑誌SHINEは、電子書籍の購入も可能で、常にその時のニーズに合わせて対応している。SNSもうまく利用しながら、色々な特集を考える。でも、いつも考えているのは、男女問わず、輝ける未来なのだ。
私は、その言葉に感動した。私も輝きたい。だからこの仕事が、大好きなのだ。大変な部分もたくさんあるが、達成感もある。
「そういうことなら、私も頑張ります」
「ありがとう。よろしくね。予定が決まったら、報告してくれる?」
「はい、まずはアポをとって、報告しますね」
「期待してるわ」
私は、さっそく仕事に取り掛かった。
まずは、この特集を成功させること。
それがきっとらんさんへの結婚祝いになると思うから。
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