何様のつもり?
冷蔵庫に食材を入れた。

私はコーヒーに牛乳を入れ、ちょっと甘めのカフェオレを作った。

「どうぞ」

ソファーに座る蓮翔。

「ありがとう。俺がまだカフェオレ好きなの知ってたの?」

「うん。初めて、蓮翔の会社に行った時、カフェオレ飲んでたでしょ?あれで、蓮翔だって気づいたから……まぁ、蓮翔を見ただけでわかったけど確信したのは、カフェオレ。高校の時から好きだったでしょ?」

R&Aの社長が蓮翔だって、確信したのはやっぱりカフェオレだった。
見た目はブラックって言いそうだけど。そのギャップが可愛い。

「あぁ、それは今でも変わらない。でもやめようとも思ったんだ。秋帆のこと思い出したくなくて……でもやめられなかった。ここまでくると中毒だなっ」

カフェオレを飲みながら話す蓮翔に、私は心が痛んだ。

「ごめんなさい。私があんなことしたから……」

「あんなことって何?」

「だ、だから私が蓮翔にキスしたからでしょ?」

「あぁ、本当最悪だった」

「えっ?本当にごめんなさい。蓮翔を傷つけて。だからもう会わないと思っていたのに今日も偶然会ってしまって」

胸が苦しんだ。

「俺の傷ついた心をどうしてくれるんだ。責任を取ってくれるか?」

「せっ、責任?」

私は、目を見開いた。どうしたらいいのだろう?

蓮翔は私の腕を掴んで、隣に座らせた。

「秋帆……」

「……」

蓮翔があまりにも真剣に私を見つめるから、目を逸らすことが出来なかった。

「髪、かなり切ったんだな」

優しく頭を撫でるからドキドキしてしまう。

「うん。再出発したくて……」

「どうして?」

「気持ちを整理したかったの。私のせいで蓮翔に辛い思いさせたから……」

「本当に悪いと思ってるなら、俺から逃げるな。そばにいろっ」

蓮翔はずっと私の頭を撫でてる。これ以上、触れられたら、蓮翔を欲しくて堪らなくなってしまう。

私のこと好きなの?それとも嫌いなの?

「私がいたら迷惑になるよ。今度は逃げるじゃなくて蓮翔の前からいなくなるそれでいいかな?」

「ダメだっ。俺の前からいなくなるな」

「……意味わかんないよ。私のことが嫌いなら顔も見たくないでしょ?なのにそばにいろって意味わからないよ」

何か言いそうな表情だが、黙っているだけ。きっと私が辛い気持ちになるのを分かっていてそばにいろって言ってるのだ。

何も話さない蓮翔にとって、どの選択がいいのかは分からない。

「わかった。蓮翔の前からいなくならない。これでいい?」

「じゃぁ、連絡先を交換しよう」

「必要ある?」

「あるだろっ。何かあったらすぐ呼べるしなっ」

「本当、何様のつもり?」

「俺様だろっ」

「きゃっ」

急に私を抱きしめるから変な声が出ちゃった。

「秋帆……」

「どうしたの?急に」

「黙って……」

何よ。もう、私の思考回路じゃついていけないよ~。

私はどうしたらいい?
蓮翔の気持ちが分からない。
なのに、嬉しくなったり悲しくなったり、蓮翔にいいように心を乱されている。

蓮翔の匂い。蓮翔の温もり。蓮翔の身体。蓮翔の声。蓮翔の言葉。何もかもが愛しくて。独り占めしたくなる。


あ~っ、私……変態?


そりゃぁ、蓮翔に抱きしめられてたら変態になるよね。

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