冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「……つまり、相変わらずお父様は見つからないままで、お兄様は疑われたままということなのね」
「ああ。だが、アイザック王子を疑っているのも王宮内の一部の人間だ。ラフバラ国王は、どちらかというとまだ友好的に構えてくださっていて、王子の疑いを晴らすために、俺も今動いているところだ」
リリーに背を向けたままで言葉を続けるリアムは、長いまつ毛をそっと伏せた。
「アイザック王子はラフバラを裏切らないと、俺は王子の妹であるきみから聞いたからな。だから俺も、リリーのその言葉を信じている」
迷いのないリアムの言葉に、リリーは思わず息を震わせた。
リアムは確証もないリリーの言葉を、信じてくれているのだ。
そしてアイザックを救うために、昼夜を問わず動いてくれている。
ここ数日、邸に帰ってこれなかったのも、その任務のためであったのだろうということは容易に想像することができた。
「もし……私があなたに、嘘をついていたとしたら?」
「……ふっ、それはないな。それに、もし仮に、きみが俺に嘘をついていたとしても、きみの嘘を俺が真実に変えるだけだ。和平のためにもアイザック王子には、ラフバラを裏切らせない。なぜならそれが、リリーとオリビアを守るための最善でもあるからな」
清廉なリアムの言葉を聞いたリリーの目には、自然と温かな涙が滲んだ。
リリーがリアムの言葉を信じる根拠はないと考えていたのと同じように、リアムがリリーの言葉を信じる根拠も何もないのだ。
(それなのに彼は……最初から無条件で私を、信じてくれているんだわ)
もちろん、リリーはリアムに嘘などついてはいないが、確証もない自分の言葉を、彼が真っすぐに信じてくれているという事実に胸が震えた。
「それに、言っただろう。きみの願いは、俺が必ず叶えると」
続けられたリアムの言葉を聞いたリリーは、思わずその場から駆け出した。
「──っ!」
そして、リアムの背後からギュッと抱きつき、広い背中に頬を寄せる。
「ごめんなさい、リアム……。本当に、ごめんなさいっ」
突然背後から抱きつかれたリアムは身体を硬直させて、何が起きたのかわからないといった様子だった。
薄手のナイトドレスをまとうリリーの身体と、リアムの距離はゼロになる。