冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「……まさか、本当にこんな日が来るとは思わなかった」

「え……?」

「あの日からずっと、きみは俺の女神だ。リリーの言葉だけがいつでも俺の心を、強く揺さぶって離さない」

「――っ!」


 言葉と同時に、リリーはリアムに力強く抱きしめられた。

 トクン、トクン、とリリーの鼓膜を揺らすのは、リアムの優しい胸の鼓動(おと)だ。


「たった今きみからもらった言葉は生涯、俺の心を曇ることなく照らし続けてくれるだろう」


 その鼓動も、どこかで聞いたことがあるような気がした。

 温かく逞しい腕に抱かれて、リリーの身体も血液が沸騰したように熱を持つ。


「すまない……。リリーを前にすると、溢れる想いを抑えきれない」


 熱い吐息とともに吐き出されたリアムの言葉に、リリーの胸は震えた。

 早鐘を打ち始めた心臓は切なくも甘い音を奏で続け、リリーは自分の頬が赤く色づいていくのを感じていた。


「あ、あの……もうひとつ、あなたに聞いてもいい?」

「なんだ?」

「私を妻にすると言ってくれた言葉も……本当なの?」


 囁くように口にされたリリーの問いに、リアムは腕の力を緩めて、自分に身体を預けているリリーへと視線をおろした。


「当然だ。俺にはきみ以外、考えられない。俺はきみと出逢ったときから、もうずっときみが欲しくてたまらなかった。俺にはもうずっと、きみしか見えていないんだからな」


 リアムの熱い告白に、リリーの胸も大きく震えた。

 こんな気持ちになるのは二度目だ。

 誰かに強く欲されることが嬉しいのに切なくて、自然と涙があふれてしまうのは――あの、隻眼の衛兵に対して抱いた想い以来だった。


「ありがとう、リアム。今すぐに、あなたの想いに答えることはできないけれど……。でも、いつかね。あなたの想いに答えられたらいいと思っている……私がいるの」


 戸惑いがちに言ったリリーは、赤く染まった顔を隠すように、リアムから目をそらした。

 いじらしいリリーの言葉と仕草に、リアムの肌がゾクリと粟立つ。

 華奢な身体と頼りない肩は相変わらず強く抱いたら、簡単に壊れてしまいそうなほど繊細だ。

 白く滑らかな肌の甘さを、リアムはすでに知っている。

 そして、その奥で輝く宝石のような彼女の輝きもリアムはすべて、知っていた。

 
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