冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「……っ!? だ、誰かに見られたら──」
「見せつけてやればいい。リリーは俺のものだと誇示できるのなら、どんな手でも使うさ」
口角を上げながら言うリアムを前に、リリーは顔を真っ赤にして口をパクパクと動かした。
そして慌ててパッと顔を逸らすと、下唇を噛みしめて胸元に手を当てる。
リアムはキスが好きらしい。実際、この三週間でリリーは何度も隙を突いてキスをされた。
そのたびにドキドキと高鳴る心臓の音は、リアムにまで聞こえてしまいそうだ。
(ズルい、こんなの……)
甘い台詞を口にするリアムはいつだって余裕たっぷりで、リリーは振り回されてばかりだった。
軍服に身を包んでいる彼は、このあとまた任務のために王都へ戻らなければならない。
それなのになぜだか今、リアムと離れたくないと思っている自分に気づいたリリーは、胸の前で握りしめた手に思わずギュッと力を込めた。
(もうダメ、こんなの心臓が持たないわ……!)
そうしてリリーは弾む心を誤魔化すように、咄嗟に思いついたことを口にした。
「そ……そういえば、このお邸の庭にも、オリーブの木が植えてあるのね」
「……ああ、気づいていたのか」
リリーの言葉に、リアムが一瞬目を泳がせる。
けれど恥ずかしさで彼から目を逸らしていたリリーは、リアムのその表情の機微に気づくけなかった。
「私が隠れていたウォーリックの王宮のあの花園にも、お母様が庭師に頼んで植えたオリーブの木があるの」
オリビアの名は、そのオリーブの木に由来している。
そして、あの隻眼の衛兵が、そのオリーブの木の枝を置いて消えたことから、縁を感じて名付けたのだ。