冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「誰にでも平等に向けられるあの子の優しい笑顔は、母親であるきみとよく似ている」
「で、でもっ。私が行かなければ、あなたが──っ」
「大丈夫だと言っただろう。みすみす、あんな男に捕まって、利用されたりはしてやらない。だからきみは俺を信じろ。俺はいつでも、きみの待つ場所へ帰ってくる」
リアムの優しい唇が、リリーの唇をそっと塞いだ。
自分に落ちてきた影に気づいたリリーは瞼を下ろすと、彼になされるがままで身を委ねる。
「……そんなに素直に応じられると、勘違いしてしまいそうだ」
吐息のぶつかる距離で囁かれ、リリーの胸は甘く震えた。
そうして、そっと伸ばした手は、リアムの左目の眼帯へと触れる。
「あなたは……寝るときも、眼帯を外さないのね」
過去、よほど左目に深い傷を負い、それを隠しているのだろうか。
これまでリアムが、どれだけの人のために身を危険に晒してきたのかと思うと、リリーはまたたまらない気持ちになった。
「私は何よりも、オリビアを失うことが怖い。でも今は……あなたを失うことも、怖くて、たまらないの」
リリーの頬を透明な涙の雫が伝い落ちる。
それを見たリアムは自身の眼帯に触れるリリーの手を取ると、その手を引き寄せ優しく触れるだけのキスをした。
「リリー、俺はきみを愛している。きみを守るためならば、どんなことでもやり遂げてみせると誓おう」
「リアム……」
「だから、今からきみのすべてを奪う権利を俺にくれ。俺にその身を預け、きみのすべてを愛でることを許可してほしい」
情熱的なリアムの言葉と、獰猛な男の色を宿した瞳を前に、リリーはそうすることが必然であるかのように音もなく頷いた。
するとそれを合図にリアムはリリーに噛み付くようなキスをして、軽々と細い身体を抱え上げた。
「ん……っ、リア、ム……!」
「リリー……っ、今はその目に、俺だけを映していろ」
そのままリアムはリリーをベッドまで運んだ。
シワひとつなくベッドメイクされていたシーツが、ふたりが動くたびに波打つように乱れていく。
何度も何度も落とされる甘いキスに、リリーの頭の中は段々と靄がかかったように白くなって、体の芯は溶かされるように甘くうずいた。