冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「そうしてウォーリックの従者たちをその場で切り捨てると、私を捕らえてこの地下牢に閉じ込め、屈辱の日々を与え続けた」

「お父様……」


 愚かな国王の考えと、憎しみばかりを心に燃やし続ける様に、リリーの目には悔し涙が滲んでいった。

 結局、国王は……リリーの父は、己の身の可愛さのためにグラスゴーのエドガーに助けを求めたに他ならないのだ。

 決して、ウォーリックを守るためではない。

 ラフバラになど捕らえられてたまるものか。グラスゴーなら自分の言うことを聞いて、ラフバラに一緒に攻め入ってくれるだろう。

 そんな国王の浅はかな考えに、いくら愚鈍といわれるエドガーでも、気がつかないはずもなかった。

 その上、そもそもラフバラは……リアムは最初から、ウォーリック国王を捕らえようなどとは考えていなかったのだ。

 あの日、ラフバラはウォーリックを救うために動いてくれていた。

 もちろんそれはリリーの兄であるアイザックの働きかけあってのことだが、父はそんなことにも気づかず、ラフバラは悪であると決めつけることしかできなかった。


「そして私は……最後の切り札として、エドガーに、あの日見たことを伝えてしまったのだ」

「あの日、見たこと……?」

「ああ。ラフバラの聖騎士団の騎士団長が、お前を……リリーを連れ去るところを見た、と。リリーが本当は生きていて、今頃はきっとラフバラに捕らえられているはずだと言って、どうにかこの地下牢から出してくれるようにと頼んだんだ」


 思いもよらない事実を知らされたリリーは、雷に撃たれたかのように固まった。

 まさか、あの場面を父に見られていたとは想像もしていなかったが、何より父が自分の秘密を寄りにもよってエドガーに漏らしていたとは思いつかなかったのだ。


「お前の愛しいリリーはラフバラにいる。だから我々の敵はラフバラだ。リリーを取り戻す名目で、手を取り合ってラフバラに攻め入ろうと言った私を、エドガーは嘲笑した。それだけではない、リリーが生きていたことを隠していた私を責め、ついにはウォーリックを攻め落としてやるとまで、この私に言い放ったのだ!!」


 ぶるぶると手を震わせて怒りに顔を染める父を前に、リリーは等々、かける言葉を失った。

 父は最後の最後まで、娘であるリリーを政治的な取引に使おうとしていたということだ。

 もちろん、リリーも今さら父には期待もしていなかったが、一国の王たるものがここまで浅はかなのか……と。更にはそれが自分の父であると思うと、愕然とせずにはいられなかった。

 
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