冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「そ、その、本来の目的とは一体なんのことだ……っ」

「そうだな。もう、教えてやってもいいだろう。俺がここへ来た目的は、そもそもお前に書状を届けるためではなかった。王宮内のどこかに幽閉された、グラスゴーの宰相を務める男に、ラフバラ国王からの密書を届けるためだったのだ」

「な――っ!」


 リアムの言葉を聞いたリリーは、ウォーリックの王宮にいたころに聞いた話を思い出していた。

 エドガーの父であるグラスゴーの前国王がグラスゴーを治めていたころは、前国王の右腕となる宰相がいたということだった。

 しかし、何故かその宰相は前国王が亡くなってすぐに行方をくらませたということだ。


「そして昨夜、無事に宰相殿を救い出し、目的の密書も届けられた。密書には、貴様が前グラスゴー国王陛下を毒殺した件についての証拠と、証言をした者がラフバラに保護されていることなどが、記してあった」


 リアムの話を聞いたエドガーは、凍りついたように固まった。


「密書には他にも、貴様のこれまでの悪事をすべて記してある。これでもう、貴様はこれまで通り大きな顔をして国王の座についていることは不可能となるだろう。今頃は俺が助け出した宰相殿が、王宮内で動いて真実のすべてを触れ回っていることだろう」

「な、なっ、何故、ラフバラがそのように余計なことを……っ!」

「それは再三、こちらが慈悲をかけてやったというのに、貴様が調子に乗ってラフバラ国王の想いを無下にしてきたからだ。さすがの国王陛下も、貴様がグラスゴーの王でいる限り和平は望めぬと、貴様のことを見限ったというわけだ」

「ぬ、ぬぬぅぅぅ〜〜!」


 今度は顔を真っ赤にして、エドガーは地面についた拳を握りしめた。

 その拳は怒りと悔しさで震えている。

 ふとリリーが顔を上げると、そんなエドガーの後ろに衛兵が立っているのを見つけた。


(あの衛兵は……私をここへ案内してくれた、衛兵よね?)


 衛兵は、仮にも自国の王がコケにされているというのに手を貸そうともしない。

 ただ冷ややかな目をエドガーに向けているだけで、腰にさした剣を抜く素振りもなかった。

 
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